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『音楽表現学』目次と要旨一覧

音楽表現学 Vol. 14

【原著論文】

三橋 さゆり

児童の歌唱活動における継続と省察の関連

-歌唱活動に対する児童の気持ちや価値観の変化に関する分析を通して―

【要 旨】 本研究の目的は、歌唱活動に対する児童の気持ちや価値観が変化していく過程を解明し、活動を継続しようとする意志には何が関連しているのかを明らかにすることである。これらの課題を明らかにするために、暁星小学校聖歌隊の児童にインタビューを行い、そこで得られたデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した。その結果、《自分の歌唱に対する省察》というカテゴリーを中心に、〈歌唱活動に対する快感情〉〈目標の出現〉〈教師からの評価や指摘の受け入れ〉〈自分の歌唱に対する自信の減少〉〈意欲のゆらぎ〉〈意欲のゆらぎの調整〉〈成長の実感〉という7 つのサブカテゴリーが抽出され、児童が主体的に活動に参加し、活動を継続しようとする意志には、自分の歌唱に対する省察が関連していることが明らかになった。

キーワード:省察、意欲、歌唱、児童、グラウンデッド・セオリー・アプローチ

【研究報告】

小島 千か

造形活動およびその作品を仲立ちとした音楽の理解

-音楽聴取から音楽づくりへ-

【要 旨】 本稿は、大学の教養科目の授業における音楽聴取とそれに伴う造形活動、およびつくられた造形作品を基にした音楽づくりを一連とする活動の報告である。活動の目的は、受講生の音楽の理解の幅を広げることにある。ポリフォニーの音楽の構成と形成原理に焦点をあてた。受講生にとって、ポリフォニー音楽における旋律の反復や重なりなどの聴取・理解は難しい。そこでまず、ポリフォニーの旋律聴取や理解を目的としてフーガを聴取し、その特徴をモールで表現する活動を行った。つくられた作品では旋律の特徴が聴取され立体的に造形化されていたものの、音楽の形成原理の視点からの理解が不充分であると考えられた。次に、完成した立体的作品の特徴を基に音楽づくりを行った。つくられた音楽作品には形成原理が含まれており、音楽の構成要素および形成原理の知的理解の促進が見られた。一連の活動を通して受講生が音楽と造形に共有可能な原理を咀嚼し、独自に応用することによって知的理解の幅が広がったと考えられる。

キーワード:音楽聴取、音楽の理解、造形活動、造形作品、形成原理

志民 一成

民謡の歌唱活動前後に中学生が歌った合唱の歌声の変化

-歌手のフォルマントと整数次倍音に着目した声質の分析を通して-

【要 旨】中学校での民謡授業の際に収録した生徒の歌声について、民謡の歌唱活動前後に歌った合唱の声質の変化を分析した。音響分析の視点として「歌手のフォルマント(singer’s formant)」と整数次倍音に着目し、音声のスペクトルに表れる音の強さ(パワー)の変化を検討した。民謡《ソーラン節》を唄う前と後に歌った合唱《ふるさと》の生徒の音声を比較した結果、民謡の歌唱活動後に「歌手のフォルマント」付近の帯域のパワーが強くなった例が多く確認されるなど、張りのある声や芯の通った声などと表現される声質の方向への変化が見られた。特に、合唱の歌唱時に頭声を主に用いる女子生徒で、民謡の歌唱活動後に張りのある、芯の通ったよく響く声質の方向へ変化するという傾向が、より強く見られた。

キーワード:民謡、歌唱活動、音声、音響分析、発声

【書評】

評者:新山王 政和

村田 千尋著『西洋音楽史再入門~4つの視点で読み解く音楽と社会~』

(春秋社、2016 年7 月15 日初版A5 版300 ページ 2900 円+税,ISBN978-4-393-93033-5 評者:林 萌

大友 直人・津上 智実・有田 栄 著

『わからない音楽なんてない! 子どものためのコンサートを考える』

(アルテスパブリッシング、2015 年11 月 初版A5 版360 頁 カラー口絵8頁 2200 円+税, ISBN978-4-86559-132-3 C1073)

評者:水戸 博道

宮崎 謙一 著『絶対音感神話 科学で解き明かすほんとうの姿』

(化学同人、2014 年7 月10 日初版B6 版250 ページ 1900 円+税、ISBN978-4-7598-1360-9)

【第14 回(メム)大会報告】

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